2026-07

灯火

忘れもの

電車の座席に、手袋が、片方だけ、残されていた。拾った女は、それを、駅員に、届けようとした。だが、ふと、思い直して、いちばん目立つ、手すりの上に、置いた。「探しに来た人が、すぐ見つけられるように」落とし主のことを、会ったこともないのに、想って...
太陽

冬の陽だまり

冬の光は、夏より、弱い。だが、冬の陽だまりの、ありがたさを、人は、知っている。強い光より、弱い光のほうが、ありがたく感じられる季節が、ある。夏、人は、太陽を、うとましく思う。冬、人は、同じ太陽を、恋しく思う。光の値打ちは、光の強さでは、決ま...
太陽

時計がなくても

昔の人は、時計がなくても、暮らせた。太陽が、時を、教えてくれたから。のぼれば、起き、傾けば、仕事を終え、しずめば、休む。太陽は、急かさない。ただ、めぐる。同じ速さで、毎日を。人は、時間に、追われるようになった。だが、ほんとうのリズムは、今も...
太陽

水たまり

雨あがりの、水たまり。そこにも、太陽は、映る。小さな、濁った水たまりの中にさえ、空と、光が、映っている。太陽は、映る場所を、選ばない。きれいな湖にも、道ばたの水たまりにも、同じように、映る。人の値打ちも、映すものの、きれいさで、決まるのでは...
太陽

曇りの日

曇りの日も、太陽は、ある。雲の上で、変わらず、光っている。見えないだけで、なくなったわけでは、ない。落ち込んでいる人に、「元気を出せ」とは、言わない。ただ、雲の上で、太陽が光り続けているように、その人のことを、変わらず、思っている人がいれば...
太陽

月を照らす

夜空の月は、自分では、光らない。太陽の光を、受けて、はじめて、かがやく。月は、太陽に、礼を言わない。太陽も、それを、求めない。だが、たしかに、太陽の光は、夜の闇のなかで、かたちを変えて、誰かを照らしている。人の善さも、そうかもしれない。あな...
太陽

しずむ勇気

太陽は、のぼるだけでは、ない。夕方には、しずむ。しずむから、また、のぼれる。ずっと照り続けることは、できない。人も、休まなければ、与え続けられない。しずむことは、負けることでも、怠けることでも、ない。明日また、のぼるための、準備だ。自分を休...
太陽

強すぎる光

太陽は、恵みであると同時に、ときに、きびしい。照りつけすぎれば、土は乾き、草は枯れる。よかれと思う光も、強すぎれば、人を、痛める。愛も、正しさも、同じだ。強い思いは、注ぎすぎると、相手を、焼いてしまうことがある。だから、太陽は、雲に、かげる...
太陽

見返りを求めない

太陽は、光を送って、礼を求めない。花が咲いても、「私のおかげだ」とは、言わない。実が実っても、代金を、請求しない。ただ、与える。与えて、しずむ。人の愛も、そうであれたら、と思う。「これだけしたのだから」と、見返りを数えはじめると、光は、急に...
太陽

また、のぼる

太陽は、毎朝、のぼる。昨日、どんなに雲に隠れても、今朝、また、のぼる。当たり前のようでいて、それは、すごいことだ。人は、一度つまずくと、もう、のぼれない気がする。だが、太陽は、毎日、何も言わずに、のぼり直している。昨日の失敗を、引きずらない...
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