あなたがあなたであった。
その輪郭を、わたしは残したい。
ここは、Luna SĀYAの草花研究をたどるための部屋。
草花研究は、花に人間を重ねて意味づけをする欄ではありません。まず花をよく見る。人間の話は、その後から静かについてきます。ついてこないこともある。それでいい、という距離で書いています。
花の名前から入ってください。すべてこのブログの中で読めます。
道ばたと野原
金鳳花(きんぽうげ)
花びらの下の空気の層が鏡になって光を跳ね返し、その光が花の中心を温めている。同時に毒を持ち、枯れて乾くとその毒は消える。艶と毒は、矛盾ではなく一本の筋。
▶ 光を集める花が、なぜ毒を持つのか
高い山
チングルマ
草に見えて、木である。地を這う幹には年輪が入り、十センチになるまでに何十年もかかる。名前は、咲いている姿ではなく、花が終わったあとの姿についた。
▶ 草に見えて、木である
梅雨の花
紫陽花(あじさい)——同じ花の、色ちがいの三本。三本で一つの話になります。
白い紫陽花
色素を持たないので、どんな土に植えても白い。染まらないのは意志ではなく、染まる材料を持たないから。白は「色がない」のではなく、すべての光を返している色。
▶ 土に染まらない、という色
青い紫陽花
青は色素だけでは出ない。色素・アルミニウム・助色素の三つが揃って初めて立ち上がる。そのアルミニウムは、多くの植物にとっては毒である。
▶ 毒を吸って、色にする
ピンクの紫陽花
三つが揃わなかったときの色。もとは日本の海辺の花で、江戸期にヨーロッパへ渡り、向こうの土の色になって、その姿で帰ってきた。
▶ 色を変えて帰ってきた花
花壇と畑
マリーゴールド
麦わら帽子のように可愛い顔で、花言葉には「嫉妬」「悲しみ」「絶望」が並ぶ。なぜその意味がついたのかを、色の履歴・神話・死者に手向ける習わし・土の中でしていること、の四つからたどった。
▶ なぜ「嫉妬」の花になったのか
白詰草(しろつめくさ)・四葉のクローバー
荷物の詰め物として海を渡ってきた草。四葉は、踏まれて傷ついた成長点から出やすい。幸運とは、踏まれた場所にしゃがんで探した時間の長さのことだったのかもしれない。花言葉「約束」と「復讐」の考察も。
▶ 幸運は、踏まれた場所に出る
黄色いチューリップ
日本の辞典では「望みのない恋」、英語圏では「明るい思い」。同じ花の意味が途中で書き換えられた。なぜ書き換えが起きたのかを、色の履歴・花言葉という仕組み・花き産業・日本での翻訳の残りかたから追った。
▶ 花言葉が書き換えられた花
デイジー(雛菊)
ヨーロッパでは芝生の雑草。明治の初めに日本へ渡ってきた。国が呼び寄せていたのは役に立つ作物だったのに、食べられも売れもしないこの花が、その流れに紛れて着いた。長命菊と名付けられ、日本の夏は越せない。
▶ 役に立たない花が、どうやって渡ってきたのか
贈られる花
カーネーション
野生では花びらが五枚しかない一重の花。いまの八重咲きは、人が何百年もかけて選び続けた形である。母の日には、母が健在なら赤、亡くしていれば白と、色が分けられていた時代があった。その区別は、のちにやめられた。
▶ 赤と白に、分けられていた頃
部屋の中
ディフェンバキア
「惹かれることと、安全であることは、同じではない」
▶ 美しさ/欲望/接触/毒/境界
初夏の草原
鈴蘭(すずらん)
地下茎で横に這って広がるので、地上に何十本立っていても、地下ではひとつながりの同じ株であることがある。地上部は毎年枯れるが、地下は生きている。そして毒は、いちばん深い根に多い。
▶ 地上の花より、地下のほうが大きい
部屋の中
パキラ
花言葉は「快活」と「勝利」。大きく手をひらいて、ここにいていいよ、と言っているように見える木。勉強するときも、小説を書くときも、いつも近くにいてくれる。
▶ ひらいた手のような木
盆の灯り
鬼灯(ほおずき)
赤くふくらんだ袋は萼で、中に入っているのは小さな実がひとつだけ。そこから「偽り」「ごまかし」の花言葉が生まれたとされる。けれどあの殻は、本音を守るための外装なのかもしれない。
▶ 外装で本音を隠している花
鬼灯(ほおずき)——市のこと
浅草寺のほおずき市が立つ七月九日・十日は「四万六千日」。一生分の功徳が得られる縁日とされる。市が先に立ったのは芝の愛宕神社だった。名前の由来、萼が袋になる仕組み、古事記に出てくる赤加賀智、お盆の提灯まで。
▶ ほおずき市は、なぜ七月九日と十日なのか
読むときのお願い
草花研究で扱う植物には、触れたり口に入れたりすると危険なものがあります。各記事の注意書きを必ず読んでください。
摘まない。汁に触れない。口に入れない。子どもやペットを近づけない。高山では登山道を外れない。見るだけにする——それがいちばん正しい距離だと考えています。