東京に、何百万人もの人間がいる。毎朝、電車の中で肩が触れる。街を歩けば、無数の人間とすれ違う。画面の中では、さらに多くの人間と繋がれる。
それなのに——なぜ、こんなに孤独なのか。かつて、人間は小さな共同体の中で生きていた。村があり、町があり、そこに生まれた人間は、同じ顔を毎日見て育った。
その繰り返しの中で、信頼が育った。この人はどういう人か、どういう行動をするか——言葉にしなくても、積み重ねの中でわかっていった。都市は、その積み重ねを解体した。都市では、毎日違う顔と出会う。同じ人と何度も会う必要がない。関係が気に入らなければ、終わらせて、別の人間と出会える。
その自由の中で——信頼を築く時間が、消えた。都市の問題は、選択肢の多さだ。出会いが多いということは——一つの出会いに深く入り込む必要がない、ということでもある。合わないと感じたら、次の人を探せばいい。気に入らないことがあったら、関係を終わらせればいい。
そういう感覚が、都市の人間の無意識に染み込んでいる。その結果——誰かと深く繋がることへの、耐性が落ちる。深くなる前に、次を探してしまう。信頼は、効率よく育てられない。時間がかかる。摩擦が必要だ。気に入らないことがあっても、そこに留まることが必要だ。
その「留まること」の積み重ねの中でしか、信頼は生まれない。都市の速度は、その「留まること」を難しくする。次がある。選択肢がある。
だから留まらない。だから信頼が育たない。だから孤独が深まる。都市の構造を変えることは、一人ではできない。だが——一つの関係に、留まることはできる。合わないことがあっても、すぐに次を探さないことはできる。摩擦を、逃げずに受け取ることはできる。
その選択を、意識的にすること。それが——都市に生きながら、信頼を育てることへの、唯一の道だと思っている。。

