ピンクの紫陽花——色を変えて帰ってきた花

草花研究

鉢植えで売られている紫陽花に、やわらかいピンクのものがある。日本の梅雨の風景から少し外れて見える色で、洋風の花のようにも感じる。

けれどこの花は、もとをたどれば日本の花だ。出ていって、向こうの土の色になって、その姿で帰ってきている。

ピンクは、アルミニウムを吸っていない色

紫陽花の青は、色素とアルミニウムと助色素——三つが揃ってはじめて出る色だった(青い紫陽花——毒を吸って、色にする)。

ピンクは、その三つが揃わなかったときの色である。

土に石灰分が残っていて中性からアルカリ寄りだと、土の中のアルミニウムは溶け出さない。溶けていなければ、根は吸えない。吸えなければ、色素は金属と結びつかない。結びつかなかった色素の、そのままの色がピンクだ。

青が「揃って出る色」なら、ピンクは何も足されなかった色ということになる。

紫陽花は、日本の花である

紫陽花のもとになったのはガクアジサイで、日本の海沿いに自生していた花だ。手毬のように丸く咲くものではなく、平たく開いて、まわりだけに装飾花が並ぶ。

これが江戸時代にヨーロッパへ渡った。長崎の出島に来ていた人たちの手で持ち出され、記録された。シーボルトがこの花を書き残したことでも知られている。

渡った先の土が違った。ヨーロッパには石灰岩から出来た土地が多く、土は中性からアルカリ寄りになりやすい。アルミニウムが溶けない土だ。だから向こうで咲いた紫陽花は、ピンクになった。

そしてヨーロッパで品種改良が進み、大きく丸く咲く「西洋紫陽花」になって、明治以降、日本に入ってきた。今わたしたちが鉢で見ているピンクの多くは、その系統だ。

日本から出ていった花が、行った先の土の色になり、その姿で戻ってきた。

色が変わったのは、花のせいではない

「向こうに行って変わってしまった」という話にしたくなる。けれど紫陽花は何も変えていない。根の下にあるものが違っただけだ。

同じ株でも、酸性の土に植え替えれば、また青が出る。ピンクにしたければ石灰を入れればいい。人の手で決められてしまう色でもある。

この花は、自分の色を主張しない。その土に何があるかを、そのまま表に出す。

隠さない、ということ

だから紫陽花の色は、その場所の説明になっている。ピンクが咲いていれば、その下の土には石灰分が残っている。青ければ、酸性に傾いている。

花が、自分の立っている場所を隠さずに出している。

良いとも悪いとも言えない性質だと思う。染まらない白があり、受け取って青くなるものがあり、受け取らないままピンクでいるものがある。どれも同じ花のやり方だ。

気をつけていただきたいこと

紫陽花は口に入れてはいけません。過去に、料理の飾りに使われた葉を食べた人が嘔吐などを起こした事例があり、行政から注意が出ています。原因物質はまだ特定されていません。料理に添えない、子どもやペットが口にしないように——それだけは守ってください。

おわりに

色を変えて帰ってきた花を、わたしたちは外国の花のように見ている。出ていったときと姿が違うからだ。

けれど土を変えれば、この花はまた青くなる。

——帰る色が、なくなったわけではない。

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