丘の途中の、小さな店。
ある夕方、ひとりの少年が、パンをひとつ持って、レジの前で、立ちつくしていた。
お金が、足りなかった。
店主は、少年の顔を見て、少しだけ考えてから、言った。
「つけといていいよ」
少年は、何度も頭を下げて、店を出て行った。
店主は、その「つけ」を、帳面に、つけなかった。
返ってこなくても、いい、と思っていた。
でも、半年後、少年は、こづかいを握って、払いに来た。
店主は、受け取った。
「ありがとう」と、だけ言って。
人を信じて待つことと、その信頼に、応えること。
そのあいだに流れた半年が、ひとりの少年を、少しだけ、大人にした。

