灯火

雨の日、バス停に、傘を持たない女子高生がいた。

隣に立っていた、見知らぬ会社員の男が、少し迷ってから、自分の傘を、差し出した。

「これ、使いなさい」

女子高生は、戸惑った。

「でも、あなたが……」

「私は、走れるから」

男は、鞄を頭にのせて、雨の中を、走っていった。

名前も、聞かなかった。

返す当ての、ない傘だった。

親切は、ときどき、返ってこないことを、はじめから、承知している。

それでも、差し出せる人が、いる。

その傘の下で、少女は、大人になっても、雨の日を、思い出すだろう。

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