四葉のクローバー——幸運は、踏まれた場所に出る

草花研究

原っぱにしゃがんで、四葉を探した時間が誰にでもあると思う。見つからないまま日が傾いて、膝が痛くなって、それでもまだ探していた、あの時間。

四葉のクローバーは、なぜ幸運の印になったのか。そして、この草の本当の名前——白詰草(しろつめくさ)——には、どんな花言葉がついているのか。

白詰草という名前

マメ科。ヨーロッパ原産。学名は Trifolium repens で、Trifolium は「三つの葉」、repens は「這う」という意味だ。名前がそのまま姿を言っている。

「白詰草」という和名には、はっきりした由来がある。江戸時代、オランダから運ばれてくるガラス器などが割れないように、乾かしたこの草が箱の詰め物として使われた。荷を解いたあと、その草に混じっていた種が芽を出して、日本じゅうに広がった。

だから「詰め草」。白い花が咲くので、白詰草。荷物の緩衝材として海を渡ってきた草が、いま日本の原っぱでいちばん見慣れた草になっている。

この草が、踏まれる場所に強い理由

白詰草は、茎を立てずに地面を這って伸びる。這った茎の節から根を下ろし、そこからまた葉を出す。だから踏まれても、途中で切れても、残った節から立て直せる。

さらにマメ科の草なので、根に小さな粒(根粒)を作り、そこに棲む菌と組んで空気中の窒素を取り込む。自分で肥料を作れるということだ。だから痩せた土でも育つ。そして枯れたあと、その窒素は土に残る。

痩せた土に入っていって、その土を肥やしてしまう草である。牧草として世界じゅうに広がったのは、この性質のためだ。

なぜ四葉は幸運なのか

理由になりそうな筋道が、いくつもある。

① まず単純に、めったにない

ふつうは三枚。四枚が出る割合は一万本に一本とよく言われる。実際に数えた調査では数千本に一本という報告もあり、場所によっても違う。いずれにせよ、しゃがんで探してもなかなか出ない。珍しいものが幸運の印になるのは、いちばん自然な理屈だ。

② 形が、十字に重なった

ヨーロッパでは三つ葉に宗教的な意味が置かれてきた。聖パトリックが三つ葉を使って三位一体を説いたという伝承が知られている。三つ葉に信仰の意味があるなら、そこに一枚多い四つ葉は、十字のかたちとして特別に見えた。

エデンの園を追われるとき、イブが持ち出した唯一の草が四葉だった——という言い伝えもある。失った楽園のかけら、という意味づけだ。

英語圏では、四枚の葉それぞれに意味が振られている。名声・富・愛・健康。そして四枚が揃ったときに幸運になる、という数え方をする。

③ 魔除けだった

ケルトの伝承では、四葉は魔除けとして扱われた。持っていると悪いものを見分けられる、という話が残っている。幸運を呼ぶというより、災いを避けるほうの道具だったわけだ。

戦場で四葉を見つけようと屈んだ瞬間、頭上を銃弾が通り過ぎた——というナポレオンの逸話も語り継がれている。出典のはっきりしない話だが、「かがんだから助かった」という筋は覚えておきたい。

四葉は、どこにできるのか

ここからが、今回いちばん書きたかったところだ。

四葉ができる理由には、生まれつきの性質(遺伝)と、育つ途中の条件の両方が関わっているとされる。そして葉を作る成長点が傷ついたところに出やすいと言われている。

踏まれる。刈られる。人が通る。そういう場所ほど、四葉は出る。

実際、四葉が見つかるのは、たいてい公園の芝生、校庭の隅、道の脇——人がいちばん踏んでいく場所だ。誰も入らない静かな草原ではない。

幸運の印は、無傷の場所には、あまり出ない。

もうひとつ。白詰草は這って広がるので、一株が広い範囲を覆っている。四葉が出やすい性質を持った株なら、同じあたりに何枚も出る。一枚見つけた人が、その場所でもう一枚見つけるのは、偶然ではない。

考察——「幸運」は、何を指していたのか

並べてみると、四葉は「落ちている幸運」ではないことがわかる。

四葉は、立って歩いている人には見えない。しゃがんで、目を近づけて、三枚のくり返しの中にある乱れを探して、はじめて見つかる。見つける人は、たいてい何度も見つける。目が慣れているからだ。

つまり四葉が証明しているのは、その人の運の良さではない。その場所に、しゃがんで、時間をかけたということのほうだ。

そして四葉が出るのは、踏まれた場所である。傷ついた成長点から出る。

——幸運とは、踏まれた場所に、しゃがんで、探した時間の長さのことだったのかもしれない。そう考えると、あの草原の午後は、ずいぶん正確な言い伝えだったことになる。

白詰草の花言葉

本によって違うので、出てくるものを並べる。

約束私を思って幸運(四葉)/復讐

三つ葉の一枚ずつに信仰・希望・愛を当て、四枚目に幸運が加わる、という数え方もある。

「約束」の由来

この花で輪を編む遊びが、昔からある。花を編んで冠にしたり、指輪のかたちにして相手に渡したりする風習から、「約束」の意味がついたと言われている。指輪の代わりになった花ということだ。

そして「復讐」

穏やかな花言葉の並びに、これだけ異物のように混ざっている。由来ははっきりしない。

よく言われるのは、踏まれても刈られても、節から立て直して広がり続けるこの草の強さから来た、という説明だ。

もうひとつ、私が思うのはこういうことだ。「約束」と「復讐」は、同じ場所から出ている。約束を覚えている者だけが、破られたことも覚えていられる。忘れてしまえば、復讐も起きない。

——前に書いたマリーゴールドも、同じ花に「変わらぬ愛」と「嫉妬」が同居していた(マリーゴールド——なぜ「嫉妬」の花になったのか)。人が花に意味をつけるとき、明るい意味の裏にはたいてい、その裏返しが一緒についてくる。花言葉が二つに割れている花は、人間の側が割れている。

気をつけていただきたいこと

強い毒を持つ草ではありません。牧草として使われてきた草です。

ただし公園や道端の草には、除草剤がまかれていたり、犬の散歩道であったりします。花冠を編むのは楽しくても、口には入れないでください。生の葉を大量に食べるのも避けてください(家畜でも食べ過ぎは害になります)。

おわりに

白詰草は、荷物の詰め物として海を渡ってきて、踏まれる場所に広がって、その土を肥やしている。

そこに、まれに四枚目が出る。踏まれたところ、傷ついたところに出る。そしてそれは、しゃがんだ人にしか見えない。

——幸運は、落ちてはいなかった。探した人の膝の下にだけ、出ていた。

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