道を聞かれて

灯火

その老人は、耳が、遠かった。

道を聞かれても、よく聞き取れない。

それでも、誰かが道に迷っていると、必ず、立ち止まった。

聞こえないなりに、何度も聞き返し、地図を描き、ときには、途中まで、一緒に歩いた。

「悪いねえ、耳が遠くて」

そう言いながら、決して、面倒がらなかった。

人は、完璧に助けられるから、助けるのではない。

うまくできなくても、放っておけない。

その「放っておけなさ」だけで、十分なことが、ある。

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