夫を亡くしてから、その人は、庭の手入れを、やめなかった。
夫が好きだった花を、季節ごとに、植えた。
近所の人は、はじめ、気の毒に思った。
いつまでも、亡き人の影を、追っているのだろうと。
だが、何年か経って、わかった。
その人は、過去に、とどまっているのではなかった。
花は、毎年、あたらしく咲く。去年と同じ花は、ひとつもない。
夫を思い出しながら、それでも、その人は、今年の花を育てていた。
喪失は、人を止めるとは、限らない。
失ったものを抱えたまま、それでも、手は動く。
庭は、その、しずかな証だった。

