愛しているのに、傷つけてしまう。
この矛盾を、多くの人が経験している。好きだから傷つける。大切だから、強く当たる。近いから、雑に扱う。
なぜそうなるのか。
一つは、安心があるからだ。遠い人には、感情を抑制する。傷つけたら関係が終わるから。しかし近い人には、その抑制が緩む。「この人は離れないだろう」という安心が、自制心を弱める。
もう一つは、期待があるからだ。愛している人には、期待する。期待が裏切られたとき、失望の深さが怒りになる。どうでもいい人には、期待しない。だから傷つかない。だから傷つけない。
そして三つ目——愛することへの、恐怖がある。
深く愛すれば、深く失う可能性がある。その恐怖が、無意識のうちに相手を遠ざけようとする。近いのに、突き放す。愛しているのに、冷たくする。
愛している人を傷つけることは、愛の欠如ではない。多くの場合、愛の深さと、自分の傷の深さが、ぶつかっている場所だ。
それを知ることが、止まれる最初の一歩だと思っている。

